「陽、目が覚めたの!?」


 保健室に入ると同時に声を上げてしまって、私は慌てて口に手を当てた。

 お義母さんに電話をかけ終わったら、丁度一緒にいた景子のスマホに加藤くんからメッセージが届いたんだ。

 陽が起きたって。

 だからつい慌てて入ってきたけど、他に休んでいる人がいたら迷惑行為だった。

 幸い休んでいる人も保健室の先生もいなくてホッとする。

 ドアを閉めて、私は陽が寝ているベッドへ向かった。


「電話終わったのか? じゃあ俺戻るわ」

「あ、うん。ありがとう加藤くん」


 陽を見てもらってた加藤くんと入れ替わるようにカーテンの中に入ると、横になっていたらしい陽が上半身を起こすところだった。


「モモ」

「陽、起きて大丈夫なの? 突然倒れたから……頭は打ってないと思うけど」


 近づいて背中に手を当てて起きるのを手伝ったり、額に手を当ててみたりとペタペタ触っていたらパシッとその手を掴まれる。

 そのまま手のひらにキスをし、頬をすり寄せた陽はいつものかわいい陽だ。

 ううん、なんだかいつもより甘いような……。


「ああ……モモだ。俺の大事な……」


 まるで私の存在を確かめるように呟いた陽は、今まで見たことが無いような眼差しで私を見る。

 とても、とても大事な宝物のような……憧憬、恋慕、思慕、色んな好意を詰め込んだような眼差し。