惑わし総長の甘美な香りに溺れて

「それに、今回はこれもあるしな」

「っ!」


 口端を上げてニヤリと笑った不良たちは、次々とポケットから刃物を取り出す。

 折りたたみ式ナイフなどの銀色が見えて、私は思わず悲鳴を上げそうになった。

 なんとか喉元で抑えたけれど、緊張で動悸が激しくなる。


 いくら陽が強くても、刃物を持った相手なんて……。

 前に見た圧倒的強さを思えばそれでも負けることはないかもしれないけれど、ケガはするんじゃないかな?

 どうしよう、誰か連れてきた方が良いかな?

 それとも先生を呼んでるフリをして叫ぶ?

 陽がケガしないように、私に出来ることを考えていたらフッと少し陽がこっちを見た気がした。

 一瞬だけだけど、目が合ったと思う。

『大人しくしとけ』って言われてるような気がした。


「エモノがあれば俺に勝てるとでも思ってんの?」

「さぁな。でもケガの一つや二つは負わせられっだろ!」


 叫び、不良たちは次々と陽に襲いかかっていく。

 正直、見ていられないって思った。

 陽が刺されたらどうしようって。

 でも、だからこそ逆に目が離せなかった。

 ちゃんと見ていなきゃ、陽がケガをしてもちゃんと手当てが出来ないから。