「は、陽。あんまりくっつかないで? 付き合ってるのは秘密だって言ってるでしょ?」


 ヒソヒソと話して肩にある手をどけようとしたけれど、しっかり掴まれていて外せなかった。


「んー、それはわかってるけどさ。でも、モモかわいすぎなんだよ。離れたくない」

「ええぇー……」


 正直嬉しい。

 でも、困るのよぉ……。


「いや、なんつーか……」


 離れてくれない陽に困り果てていると、目の前の加藤くんがなんとも形容しがたい苦笑いを浮かべていた。

 彼がチラリと目配せした景子も困り笑顔。


「うん……ねぇ、そこまでくっついてたら秘密の意味ないんじゃない?」


 だよねぇ!?

 景子のツッコミに、私は心の中で盛大に頷いた。

 そのとき、なんとなく他とは違った視線を感じて教室の出入り口に視線を向ける。


「っ」


 見覚えのあるガラの悪い人たちに一瞬息を止めた。

 私が身を固くしたのに気づいたんだろうか。

 陽がすぐに位置を変えて私を不良たちから隠してくれた。