「玲衣くん、自分が着てたパーカー貸してくれたよね? まだ寒かったのに、大丈夫って強がっちゃって」
「そりゃあ強がりもするさ。いつもとちがう公園で、他にたよれる上級生がいなかったし……母さんたちは世間話してるし。莉緒のことは俺が守らなきゃって思ったんだ」
「そうだったんだ……」

 私はあのとき、そうやって守ってくれる玲衣くんがヒーローみたいに見えた。
 あのときから私は玲衣くんに(あわ)い恋心を(いだ)いてたんだろうなって、今ならわかる。

 手を引かれて、その噴水に近づいて二人でふちに座った。
 真夏の今は水しぶきが心地いい。

「あの小説のヒーローとヒロインの初恋シーンって、あのときのことネタにした?」
「うっ……ごめんね? ピッタリだと思って」

 もし玲衣くんがあのときのことを覚えていたらそれをネタにしたってバレるよねって思ったけど……。
 でも、玲衣くんへの思いを作品にこめようって決めて書いたからどうしてもあのエピソードは外せなかったんだ。

「いいよ。自分の体験したことをもとにして書いたからあれだけリアルに書けたんだろうし」

 勝手にネタにしたことを怒ることもなく許してくれた玲衣くんにホッとする。