玲衣くんに手を引かれてついたのは見覚えのある公園。
 広場の中央に小さな噴水(ふんすい)があって、(おく)に子供が遊べる遊具がいくつかある場所だ。

「あ、ここって……」
「覚えてるか? 小1くらいのとき、親に連れられて一緒に来たよな?」
「うん。……でも場所までは覚えてなかった。こんな近くにあったんだね」

 あれはたしか小学生になって少ししたころ。夏前で、まだちょっと肌寒(はだざむ)い日。
 たまにはちょっとはなれた公園に遊びに行こうかってお母さんに連れられて来たんだ。

 玲衣くんもお母さんに連れられて、四人でここに来たのを覚えてる。
 でも小さいころだったからどの道を通って来たのか覚えてなかったし、体感ではもっとはなれた場所にあると思ってた。

「莉緒の小説読んでここを思い出してさ、母さんにくわしい場所聞いといたんだ」
「そ、そうなんだ」

 私の小説を読んでってところでドキリとする。
 だって、その小学一年生のときにここであったことを思い出しながらエピソードの一つを考えたから……。
 もしかして、玲衣くんもあのときのこと覚えてるのかな?

「この噴水の近くで遊んでたら、莉緒、他の子に水かけられて泣いたんだよな?」
「うん」

 まだ水遊びするような季節じゃないのに水浸(みずびた)しにされて、このままじゃお母さんに怒られるって思って泣いちゃったんだっけ。
 寒いし、どうしていいかわからなくて泣いて。……あのときも玲衣くんがなぐさめてくれたんだよね。