「でも本当にすごいよ。特別賞ってようは、受賞とはいかなくても選外にするには()しい作品ってことだろ? 絶賛されたわけじゃないけど、編集さんに惜しいって思われたってことだもんな」

 いつもはクールで落ち着いた印象の玲衣くんなのに、興奮したみたいにたくさん話してくれてる。
 それだけ喜んでくれてるんだって思うと私もすごくうれしい。

「特にほら、選評のここ。『ヒーローを思うヒロインの描写(びょうしゃ)がとてもよく書かれている』って、莉緒の描写力がほめられたってことだろ?」
「う、うん。それは本当、特にうれしかったよ」

 選評の文面の一部を指摘(してき)されてドキリとした私は、笑顔で誤魔化(ごまか)して返した。
 だって、その部分は玲衣くんを思って書いたところだったから。

 ヒロインが私で、ヒーローが玲衣くんだったらこんな気持ちになるなって思いながら書いたから……。

 あー、でもそれを玲衣くんも(ふく)めてたくさんの人に読まれたんだよね?
 わかっていたことだけど、今さらながらはずかしい……。