「って、あれ? 莉緒、もう泣き止んでる?」
「え? あ、そうだね」

 指摘(してき)されて気づいたけど、はじめて見る玲衣くんの姿にビックリしていつの間にか止まってたみたい。

 私が泣いているといつもなぐさめてくれる玲衣くん。
 今回はいつもとちがう方法だけれど、私以上に怒ってくれることで涙を止めてくれた。
 実際心も軽くなってる。

「玲衣くんのおかげだよ」
「なんでだよ、俺怒ってただけだぞ?」
「でも、玲衣くんが怒ってくれてなかったらまだ悲しい気持ちが強かったと思う。だからやっぱり玲衣くんのおかげだよ」

 お礼の気持ちをこめて笑顔を向けたけど、玲衣くんは「そうか?」ってまだ不思議そうな顔をしてる。
 そんな玲衣くんが、なんだかとっても大切に思えた。

「玲衣くんって薬みたい」
「へ?」
「私が傷ついて悲しくて泣いてると、なぐさめて傷をふさいでくれるから。今だって、私のために怒ってくれてたでしょ? そのおかげで傷がふさがったの」
「……でも、傷あとは残るだろ?」

 玲衣くんは本当に優しい。
 目に見えない心の傷をふさいでくれるだけじゃなくて、その傷あとまで心配してくれるなんて。

「傷ついた心はもどらないからね……でも、すぐに玲衣くんにふさいでもらえたから傷あとも早く薄くなっていく気がするんだ」
「……そっか」

 私の説明に納得してくれたのか、玲衣くんはフッと笑顔になってくれた。
 手をのばして、いつかのように目じりに残ってた涙をぬぐってくれる。

「じゃあ、俺はずっと莉緒の薬になってやるよ」
「玲衣くん……」

 夕日色に染まった笑顔が、とてもまぶしく見える。
 泣きたくなるくらい胸がキュウゥッとしめつけられて……。

 好きって気持ちがあふれた。