協力してくれると言った玲衣くんは、さっそく課題を出してくれた。

「『そう言って彼はわたしの手首をつかんで引きとめ――』あ、引きとまるになってる。誤字(ごじ)また見つけちゃった」

 ションボリ――というか、もはやうんざりしながら私ははじめて書いた小説の誤字を直す。
 玲衣くんから出された課題は書いた小説を声に出して読み返すこと。
 そうすることで誤字脱字(ごじだつじ)が見つけやすくなるし、変な文章になってるところもおかしいってわかるだろうって。

「でも文章だけじゃなくてここまで誤字が多かったなんて……なんで書いてるときに気づけなかったんだろう?」

 そう思ちゃうくらい多くて本当にうんざりしてきた。
 たった三千文字くらいなのに、文章も“ん?”って引っかかるところを直してたら日曜日の午前中いっぱい使っちゃった。

「玲衣くん、今日も午後来るって言ってたよね? なんか調べてくるとか言ってたけど……」

 なにを調べるんだろう?
 はて? と首をかしげた。



 そしてなんとかはじめての作品の修正を終えて、午後に来た玲衣くんに出来たよって報告した。

「よし、ちゃんと出来たんだな」

 えらいえらい、って頭をポンポンされて私はくちびるをとがらせる。

「もう、子どもあつかいしないで!」
「ああ悪い。でも莉緒って小さい子みたいにかわいいからさ」
「なにそれー」

 あやまっておきながら悪びれない玲衣くんについほほをふくらませた。

 でも、子どもあつかいは不満だけど……ポンポンされたりかわいいって言われたことにはドキッて心臓が反応しちゃう。
 小学生のときもカッコ良かったけれど、もっとカッコ良くなった玲衣くんに私ずっとドキドキしてる気がする。