「ごっ、ごめん。余計なこと聞いてしまって。それより紫苑くん、肩濡れて……」


帰り道を歩いているとき紫苑くん、ほとんど私のほうへと傘を差しかけてくれていたから。


「私、家からすぐにタオル持ってくるから。良かったら玄関で待ってて……」

「いいよ。ウチ、ここから近いし。それじゃあ咲来、また明日ね」


それだけ言うと、紫苑くんは早足で私の家から去って行ってしまった。


家の話をした辺りから、明らかに紫苑くんの様子が変だった。

どうしよう。私……もしかして紫苑くんのこと、怒らせてしまったかな?


それから私は家に入ってすぐに自分の部屋で、スマホのチャットアプリで【さっきは本当にごめんね】と、紫苑くんにメッセージを送ったけれど。


メッセージに既読がついたのみで、その日彼から返事が来ることはなかった。