クスノキの歌姫

 そりゃ、きこえてたに決まってる。

 いつもなら、歌う前に、もっと慎重になるところだけど、今日は伐採の件で動揺しちゃってたから……。

 今さらながら、恥ずかしさがこみあげてくる。

 もう、今すぐ、ここから消えちゃいたい。


「あのさ……このクスノキのこと、歌ってたんだよな?」


 花宮くんにたずねられ、かあっと、燃えあがるように顔が熱くなった。


「あ、あ、あのっ! ごめんなさい!」

「えっ? いや、ちょっと!」


 まだ何か言いたげな彼を残して、わたしは逃げるように走りだした。