クスノキの歌姫

 わたしは二組で、花宮くんは三組。

 一年生のときもクラスは離れていたし、そもそも、小学校のときは学区が違ったから、今まで接点らしいものはなかった。

 それでも、花宮くんのことは知ってる。

 サッカー部で、友だちも多くて、学校で目立っている男の子だ。

 それに……とびきりイケメンだから、女の子にも人気がある。

 切れ長の瞳に、スッと通った鼻すじ。

 よく日焼けした肌は健康的で、髪はサラサラ。おまけに背も高い。

 いつも学ランのホックをはずしていて、先生によく注意されている。

 学年が違っても、花宮くんのことは、みんな知ってるはず。


 それにひきかえ、わたしはまるで目立たない。

 ……というか、目立つような行動はさけてきた。

 人見知りが激しくて、まともに話せるのは小学校から仲良しの萌ちゃんだけだし。

 わたしは、花宮くんと真逆で、空気みたいな存在なんだ。

 だから正直、花宮くんが、わたしの苗字を知ってくれていたことは意外だった。


「……おまえ、歌、上手いんだな……」


 花宮くんに、頬をかきながら照れくさそうに言われて。


 ――やっぱり、きかれてたんだ!


 けっこう、大きな声で歌っちゃってたもん。