クスノキの歌姫

 放課後、家にも帰らないで、制服のまま公園にやってきたというワケで。

 やりきれない感情は、言葉になった。

 最初は、ぽつり、ぽつり、とクスノキに語りかけていたけれど……。

 いつしかわたしは、頭に浮かんだメロディーにのせて、歌いだしていた。


「四百年も前からずっと 

 みんなを見守ってきた」


 これは、いつものクセだった。

 口下手なわたしは、ひとりごとすら、たどたどしいから。


「風にゆれる葉は青く 

 その身に時を(きざ)みつつ」


 歌っているときのわたしは、自信にあふれていると思う。

 思っていることも、素直に出せる。

 クスノキを通して、天国のパパとママにとどいていたら、いいな。

 ――そのときだった。

 クスノキの太い幹の裏側から、ひょっこりと、黒い影があらわれたんだ!


「――っ!」


 心臓が止まるかと思った。


「……は、花宮(はなみや)くん……?」


 わたしと同じく、大楠南中学校に通う二年生の花宮樹生(いつき)くんが立っていて……。


「あ……えっと……二組の……咲真……だっけ?」

「う……うん……」


 わたしは、うなずくので精一杯。