彼と出会ったのは、まだ十代の頃。

 街を探索していた彼と偶然出会い、恋に落ちた。王太子であった彼には親の決めたクリスティーナという名の婚約者がいたというのに、これが真実の愛なのだと酔いしれ、人目もはばからずに寄り添った。

 愛していたし、ライサからすれば格上の男に見初められ順調にいけば豊かな暮らしが出来るだろうとの打算もあった。

 最初から正妃を望んだわけではない。側妃にでもなれればよかった。何だったら能力値の高そうな子を、正妃より先に産んでしまいさえすれば先行きは安泰だろうと、そう考えていた。

 だというのに、王太子だったエフレムがライサを王太子妃にすると決めた。

 決められたからには役割を果たすしかない。
 本来王族と結ばれることのない末端とはいえ、ライサは貴族の娘だった。村娘のように何も知らない顔をして逃げ出すことも、誰かに責任を押し付けてしまうことも出来なかった。

 愛するエフレムの言うがままに、彼の婚約者であった公爵令嬢の悪行を訴え出て、涙ながらに真実の愛を語る。そうして正義の名のもとに、エフレムは婚約破棄を宣言、ライサは婚約者の後釜に座ることとなった。

 断罪されたクリスティーナはそのまま処刑されることとなり、短い生涯を終えた。


 ――すべては冤罪である。