ああ、とライサは内心で呻いた。過去の過ちが返ってきた。

 自分がやられる側となって真に理解する、当時犯した罪の重さ、あの日断罪された人物の恐怖と嘆き、そしてエフレムの身勝手な傲慢さ。

 エフレムがこのような人間だとはとっくに知っていた。
 なんせ人生をそれなりの年数ともにしてきた夫婦なのだから、良くも悪くもお互いを見続けてきた。

 ……今となっては、彼の方は本当にライサのことを見ていたのかわからないけれど。

「わたくしはそのようなことなどひとつも!」
「王妃という立場を笠に着てやりたい放題であったと! 余が多忙なことを上手く利用しおって!」
「陛下!!」

 強い語気で吐き捨てるエフレムは、話を聞く気など端からないのだ。
 離れた場所で顔を青くしている我が子マルクに首を振ってみせ、駆け寄ってくれるなと伝える。
 冤罪で断罪されるのならば、誰を巻き込むことも望まない。
 間違いだったのだ。生まれの身分を越えて王妃となったことも、そもそも手が届かないはずの彼を求め、そうして結ばれたことも。