王は断罪し、彼女は冤罪に嗤う



「マルク・ディメイズの名において、このディメイズをよりよい国へと導くとここに誓う!」

 ライサが少女へと訴え、願い出たのは、王族を一人、残すこと。

 全員が死ねば王位を巡っての争いが起きるのは必至。だが一人が生きていたなら、国王を神とするこの国であれば当分は国らしく在り続けるだろう。壊すにしても、罪のない国民を道連れにしてはならない。

 自分たちを、とは望まなかった。我が子だけはと考えなかったとは言えないけれど、クリスティーナを死に追いやった元凶である身でそうと望めるほど愚かにはなりたくなかった。

 それでも少女が選んだのはライサたちだった。まだマシだからと生かされた。
〝聖なる力〟により脳を破壊されたエフレムはもはや屍も同然。おそらく一番継がせるなどと望んでいなかった息子が即位するとなって、意識があれば不満を口汚く垂れ流しただろうに。食事もままならない廃人は死にゆくだけ。

 ライサはマルクを支え、いつか必ず滅ぶであろうこの国が、少しでもゆるやかな破滅を迎えるよう誘導するための標となる。
 それは自分や息子の世代では見届けられぬことだろう。この先で意志が途絶えるかもしれないし、しかし逆に真実よい国へと舵を切る可能性もゼロではない。


 精々足掻いて見せてくださいな――。


 声が、頭の中に響いた。
 国が終わりへと向かう、足音とともに。