王は断罪し、彼女は冤罪に嗤う

 死を得る覚悟は改めて決めずとも、ある。しかしそれは自身についてであり、一族皆殺しについてではない。そうなってもおかしくない罪を抱えた一族ではあると知っているから、仕方ないとの思いもよぎりながら、揺らがぬように紫の瞳を見据え続けた。

 搾取するばかりの国の王妃が何を、と不快に受け取られるに違いない。どうにかしなくてはと一人頭を抱えていたことなど誰も知りはしないのだ。
 誰も頼れなかった。頼らなかった。周囲が腐敗しきっていることは明らかで、なのにそこで生きてきた者たちはそんな自覚などまるでない。

「いずれ崩壊は免れないのかもしれない。それでも……」

 このような国では、いつかは腐り落ちるしかない。
 だが突然の崩壊は数多の死に繋がる。他者を傷つけ、結果傷つけられて生きてきたライサは、それでもこの国を守りたかった。伴侶であるはずの相手から得られぬ愛を、我が子と国に向けてきた。
 底辺妃のやることはと嘲られても、必死に生きてきた。

「どうか、クリスティーナ様――!」