紫色の瞳が神の血筋である証拠だと、国民ならば誰もが知っている。
他の人間にない特異な能力である〝聖なる力〟を所持していることを示すものでもある。王家に連なる生まれでなくとも突然現れるとも言われているが、瞬間的に瞳の色が変化するなどとは、妃教育の中で読んだ歴史書にも王妃となってから手にした書物にも記されてはいなかったはずだ。
「父上!!」
王太子が走り出た。二人の間に飛び込み引き離そうというのだろう。ライサは咄嗟に彼の前に立ち塞がる。
「どけっ!」
「なりません! 王の御前で何をなさるおつもりですか!」
「その王を守るのだろうが! いいからどけッ!!」
力任せに押し通る王太子に突き飛ばされたライサは体勢を崩して倒れる。尻もちをつき、慌てて上半身を起こした視線の先ではすでに王太子がナタリアの肩を引くところだった。
紫の瞳が振り向き、彼女の背後にエフレムが落ちるように座り込む。
王太子はヒッと短く声を上げたかと思えば動きを止め、呆けた顔をして立ち尽くした。
「はじめまして、王太子様。あなた個人に恨みはないのだけれど王太子というものにトラウマがあるものですから。あなたも彼と同じで他者を踏みにじって生きているのでしょうね」
ぐらり、王太子の身体が傾き、崩れ落ちる。誰もが様子を見守るものの、護衛の一人でさえそれを受け止める者はいない。
だが突然のことであるがゆえだ。今日は国中の貴族を集めたがために警備も厚い。にわかに動き始めた兵士の姿に、ライサは急ぎ立ち上がりナタリアの手を取って引く。
他の人間にない特異な能力である〝聖なる力〟を所持していることを示すものでもある。王家に連なる生まれでなくとも突然現れるとも言われているが、瞬間的に瞳の色が変化するなどとは、妃教育の中で読んだ歴史書にも王妃となってから手にした書物にも記されてはいなかったはずだ。
「父上!!」
王太子が走り出た。二人の間に飛び込み引き離そうというのだろう。ライサは咄嗟に彼の前に立ち塞がる。
「どけっ!」
「なりません! 王の御前で何をなさるおつもりですか!」
「その王を守るのだろうが! いいからどけッ!!」
力任せに押し通る王太子に突き飛ばされたライサは体勢を崩して倒れる。尻もちをつき、慌てて上半身を起こした視線の先ではすでに王太子がナタリアの肩を引くところだった。
紫の瞳が振り向き、彼女の背後にエフレムが落ちるように座り込む。
王太子はヒッと短く声を上げたかと思えば動きを止め、呆けた顔をして立ち尽くした。
「はじめまして、王太子様。あなた個人に恨みはないのだけれど王太子というものにトラウマがあるものですから。あなたも彼と同じで他者を踏みにじって生きているのでしょうね」
ぐらり、王太子の身体が傾き、崩れ落ちる。誰もが様子を見守るものの、護衛の一人でさえそれを受け止める者はいない。
だが突然のことであるがゆえだ。今日は国中の貴族を集めたがために警備も厚い。にわかに動き始めた兵士の姿に、ライサは急ぎ立ち上がりナタリアの手を取って引く。



