「王妃ライサよ! エフレム・ディメイズは、ここに貴様と離縁することを宣言する!」


 国王であるエフレムの誕生祭で、それは起きた。
 王城の最も広い大広間をメイン会場に、集められたのは国内の貴族のほとんどであると、手配に関わったライサは知っていた。

 誕生祭だ。本来であれば現国王であるエフレムを言祝ぎ、その治世を褒めたたえ、この先々に続く安寧を喜ぶ、祝いの場だ。
 それがこのような宣言が行われようとは。国王が白と言えば白、黒と言えば黒になる国である、周囲は息を殺し、続く展開を見守るしかない。

「……なぜでございましょう。わたくしは貴族も末席の出自ではありますが、国のため、陛下のためにと努めて参ったつもりです」

 ライサの声は、震えはしなかった。それは本人の言う通り、王妃たるものそうあるべきと彼女が努力して得た資質であった。
 凛と対峙するライサに、エフレムは喉を鳴らして笑う。

「貴様が私利私欲により国費を不正に横領したことはわかっている。余の寵愛を得た女たちに行っていた嫌がらせについて見逃してやっていたというのに、我が子可愛さに側妃腹の王太子を害そうとしたことも数知れず、そのような者を王妃に据え続けるのも最早限界というもの」