グレン殿下と街へ出掛けてから、暫《しばら》くが経った頃。

我がベルシナ国では、晴れが続くことにより水不足が深刻化していた。

ベルシナ国は昔から水が豊富にある国ではない。

最近の天候は、水不足を深刻化させるには十分だった。

グレン殿下は忙しそうにしていらして、最近はあまり顔を合わせられていない。

私は少しでも自分に出来ることをしようと、フォンリース公爵家の領地に視察に来ていた。

「作物の痛みが激しいわ・・・・」

状況は思ったよりも深刻で、すぐにでも手を打つべきものだった。




「どうしたの?」




声を掛けられ振り返ると、見たことのない青年。

青年は私の見ていた作物に目を向ける。

「ああ、これは大変だね」

領民であるはずなのに、まるでその作物を初めて見たような反応だった。