本当はずっと不安だった。

私に味方が一人もいない訳ではないことは分かっている。

それでも学園を追放された時、ただただ怖かった。

怖くないはずなどなかった。

それでも、前を向こうと必死だった。

グレン殿下は私の頬に触れた手で、私の涙を拭《ぬぐ》う。

馬車の外には、綺麗な夕日が輝いていた。

「ここが、エイリル嬢のお気に入りの場所?」

「・・・・ええ。夕日が綺麗に見えて、とても好きなのです」

グレン殿下の夕日を眺める横顔が、あまりにも綺麗で私はもう一粒涙を溢《こぼ》す。

グレン殿下は、私を屋敷に送る馬車の中で震える私の手をずっと繋いでいて下さった。

「グレン殿下、今日は本当に有難《ありがと》うございました」

「私もとても楽しかった。エイリル嬢も少しは気晴らしになったか?」

その問いに私が小さく頷いたのを見て、グレン殿下は嬉しそうに微笑んだ。

その日の夜は、グレン殿下と見た夕日を思い出すとすぐに眠ることが出来た。