その時、部屋の扉がコンコンとノックされた。


「お嬢様、グレン殿下がお見えです」


「っ!」


どうしよう、まだ心の準備が出来ていない。

しかし、王族の訪問を拒否出来る者などこの国に存在しない。

私は一度だけ深く深呼吸をした。

「すぐに準備して、客間に向かいますわ」

何を伝えられるのか、どんな用事なのか、緊張しながら客間の扉を開けた私にグレン殿下はいつも通り優しく微笑んだ。


「ねぇ、エイリル嬢。私と街へデートに出かけないか?」


甘い言葉と共にグレン殿下が私の手を取り、そっと口付ける。

どうやら今日はいつもと違う日になりそうな予感がした。