私の表情から察したグレン殿下は、優しく微笑んだ。


「無理強《むりじ》いは絶対にしない。君の父上にも約束した通り、私は君を傷つけるつもりは一切ない。国王にすら進言するつもりだ。だから、全て君の選択次第だ」

「ただ、これだけは覚えておいて欲しい」


するとグレン殿下が急に椅子から立ち上がり、私の隣に座り直す。

そして、優しく私の手に触れた。



「私はあまり冗談が得意ではないんだよ?」



そう述べたグレン殿下はまたすぐに立ち上がった。

「返事は急がないし、ゆっくりで構わない。ただ、またエイリル嬢に会いにくるよ。私が君に会いたいからね」



「愛しているよ、エイリル嬢」



帰り際にそう仰って微笑んだグレン殿下は、まるで絵本に出てくるお姫様を守る騎士様の様だった。