美しいドレスを纏《まと》い、鏡の前で髪型を確認する。

今日は、グレン殿下との婚約記念パーティが開催される日だ。



私はパーティの前に、招待客の中からある隣国の王子を控室に呼び出した。



「エイリル、どうしたの?もう、俺と話すことなんてないでしょ?」



いつも軽口の中に苦しみが隠れたままであることが分かる。



「リベス、貴方は言いましたわ。「優しさ」だけでは生きていけない、と。だから、貴方に処罰を与えます」


「前を向いて下さいませ」


「自国の利益のためにやったことを、私情に任せて苦しむなど貴方らしくありませんわ。貴方はパシュル国のことを一番に考えている立派な王子です」

「私は貴方を尊敬している。それでも、貴方を愛してはいない。それが私なりの告白の返事であり、私なりの誠意ですわ」



私は、ちゃんと声を震わせずに言えているだろうか。

どうか、伝わって欲しい。

貴方が苦しみ続けることを私は願ってなどいない。