「貴方、馬鹿なの?それとも、私にされたことを忘れたのですか?」

もう一度、シーラック伯爵家を一人で訪れた私をリエナ様は嘲笑《あざわら》った。



「それとも、私を殺しにでも来たの?」



私は何も答えない。

ただリエナ様の目の前で、目を瞑《つぶ》り、胸の前で両手を組む。

そして、あることを口にする。





『リエナ様を、殺して下さいませ』






「っ!あんた、何をっ!」






しかし、【何も起きない】





「リエナ様、私の聖女の力は【本当の願い】しか叶いませんわ。つまり、リエナ様を殺すことを【私は願っていない】」

「リエナ様、貴方の聖女の力を教えて下さい。私は貴方と向き合いたい」




リエナ様は、顔を歪《ゆが》める。