よく眠っていた朝方、慌てふためいているような足音が聞こえてきて香ること切神はほぼ同時に目を覚ました。
障子の向こうへ視線を向けるが、まだ夜は開けきっていない。

外は霜に濡れて寒いだろう。
こんな時間に一体誰が。

そう思って薫子が布団の中で上半身を起こしたとき、男の声が聞こえてきた。
「神様頼みます、神様頼みます」

何度もそう言っているのがわかって切神へ視線を向けた。
よほど切羽詰まっているように聞こえる声だけれど、切神は知らん顔でまた目を閉じた。

「心配する必要はない。もう1度眠るといい」
「でも……」

男の声は1人ではない。
二人分の声が聞こえてくる。