その夜、切神は薫子に着物とカンザシを贈った。
「こ、これは……」

赤地に金色の刺繍がほどこされた立派な着物。
それに赤いサンゴのついたカンザシを前にして薫子は絶句してしまった。

村の人たちが用意してくれた白無垢も上等なものだったけれど、今目の前にしているものと比べれば取るに足らない。
「薫子に似合うと思って用意した」

「こんな高価なもの、いただくことはできません」
「薫子は私の妻だ。自分の妻がみすぼらしい格好をしているのは見ていられない」

そう言われて薫子は黙り込んだ。
着物もカンザシも確かに立派だ。

だけどその言い方はどうかと思ってしまった。
村の人たちが用意してくれた白無垢が、みすぼらしいと言われた気がして。

「すまない。そういう意味じゃないんだ」
薫子のうかない顔を見てすぐに察したのか、切神が眉をさげた。