そうしている間に包丁を使うトントンという音まで聞こえてきて、薫子はすぐに着替えを始めた。
よくわからない状況だけれど、とにかく向かうしかない。

手早く着替えを済ませて障子を開けるとそこには広い廊下が見えた。
「え……」

神社を表から見たときにはなかったはずの光景に戸惑いつつ、音がする方へと足を運ぶ。
引き戸を開けるとそこは広い土間になっていて、切神が音に気がついて振り向いた。

「薫子、起きたか」
にっこりと微笑む右手には包丁が握られていて、お味噌汁の匂いが空腹のお腹を刺激してくる。

薫子はすぐに土間におかれている草履をひっかけて切神に近づいた。
かまどでは鍋がかけられていてグツグツといい香りが漂っている。

釜の中には炊きたての白米があった。
「こ、これは切神さまがされたんですか?」

「私だってこれくらいのことはできる」
「す、すみません! すぐに変わります!」

まな板の上には大根の漬物が乗っていて、これを切ってリいる最中だったようだ。
薫子はすぐに腕まくりをして料理を始めたのだった。