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「本当にありがとうございます!」
翌日、外から聞こえてきたそんな声で薫子は目を覚ました。

一瞬ここがどこだかわからなかったけれど、すぐに縁切り神社の本殿だと気がついた。
昨日見た火はすでにどこにもおらず、扉の隙間から太陽の光が差し込んできている。

薫子は着物姿のまま床で寝てしまい、身体のあちこちが痛くなっていたがどうにか上半身を起こして外の様子を伺った。
隙間から確認してみると沢山の村人たちが手にお供え物を持ち、列をなしている。

「一晩のうちに盗賊はいなくなりました。ありがとうございました」
口々に礼を言い、お供え物を置いて戻っていく。

その顔はみんな笑顔で、清々しいほどだ。
「神様が助けてくれだんだ」

薫子は昨晩のことを思い出してつぶやいた。
神様はたしかにいた。

キレイな男の顔をしていて、熱くない火を出してみせた。