その声に反応するように大志のまつ毛が揺れる。
それからほどなくして大志も目を覚ましたのだ。

ふたりの顔色はよく、菊乃が用意したお粥もすごい勢いで平らげてしまった。
体はガリガリだけれど、病はすっかり抜け落ちてしまったようだ。

そんなふたりを菊乃にまかせて薫子は本殿へと急いだ。
病が落ちたということは縁切りができたということだ。

「切神さま」
薫子は少し躊躇してから、そっと声をかけた。
もう仕事は終わったはずだけれど、出てこないところを見るとまだやることが残っているのかもしれない。

薫子の声かけに返事はなく、本殿の中は静かだ。
出直してこようと薫子が立ち去りかけたとき、火が飛んできて本殿の戸に張り付いた。

切神の火だから燃えることはないけれど、なにかを必死で訴えかけてきているように見えて足を止めた。
「どうしたの?」

薫子が手を伸ばした火を戸から引き離そうとしても、火はそこから離れなかった。
火は時折大きく燃え盛り、かと思ったら消えてしまいそうなほど小さくしぼむ。