ただ、最後にこうしてキレイな花嫁衣装を着ることができる嬉しさだけに意識を向ける。
「さぁ、できたわよ」

やがて薫子は完全な花嫁姿となっていた。
姿見に映った自分を見て薫子は嘆息する。

自分で言うのもなんだけれど、こんなに美しい娘は見たことがない。
白無垢には鶴が飛び立つ姿が描かれていて、これからの未来が輝かしいものに見える。

そしてそんな衣装に身を包んでいる自分もキラキラと輝いて見えた。
これから神様の生贄になるというのに、薫子は微笑んでいた。

「薫子ちゃん、とても綺麗よ。すごく綺麗」
気がつけば年配の女衆が集まってきていて薫子を取り囲んでいた。

縫い物を教えてくれた人。
料理を教えてくれた人。
洗濯を教えてくれた人。