そう言ったのは冴子だった。
冴子は大きな目をギョロリと動かして薫子を見る。

冴子の言葉に一瞬自分の四肢がもがれた死体を想像してしまった。
薫子はそれをすぐに頭からかき消す。

縁切りの神様だからって、四肢を切られるとは限らない。
「こら冴子、そんなこと言うもんじゃないよ」

冴子の母親がすぐにたしなめたけれど、薫子は左右に首を振って「大丈夫です」と、答えた。
千桜も冴子も自分を心配して言ってくれていると、ちゃんとわかっている。

ふたりは口下手なだけだ。
「縁切りの神様はとても恐ろしいと、長からも聞いてるから覚悟はできているわ」

薫子はふたりへ向けてそう言った。
そんな風に殺されてしまうかは、もう想像しないことにした。