普通に嫁に行ったのであれば相手の家と折り合いが悪く追い出されたと言っても理解が早い。
けれど薫子は神様の生贄となった身だ。

いくら説明を受けても菊乃は驚くばかりだった。
「とにかく薫子が生きていてうれしい」

菊乃はそう言うと薫子の体を抱きしめた
薫子も菊乃を抱きしめ返す。

菊乃の懐かしい香りに表情が緩んだ。
「魚しかないけど食べるでしょう?」

「うん、ありがとう」
菊乃の好意をありがたく受け取りながら薫子は気になっていたことを質問した。

「千桜と冴子のふたりがどうしているか、知ってる?」
「千桜と冴子? あのふたりは急に村から出ていったのよ。なんの知らせもなく」