切神にはどうしようもないことだとわかっているから、これ以上の迷惑もかけられない。
「なにか答えたらどうだ」

切神が低く威嚇するような声でそう言ったときだった。
外に足音が聞こえてきてふたりは同時にそちらへ視線を向けた。

大人の足音ではないことはすぐにわかった。
歩幅は小さく、石段を登ってきたことでかなりくたびれていることが伺える。

先に立ち上がったのは薫子だった。
けれどそれを制して前に出たのは切神だ。

ふたりは競うようにして庭へ出て、境内へと足をすすめる。
案の定、そこにいたのは薫子が見たあの兄弟だった。

兄弟たちは切神の姿に目を丸くして怯えた表情を浮かべている。
けれど兄の方がすぐに唇を引き結んで一歩前に出た。

「き、昨日はごめんなさい!」
小さな体を震わせて懸命に頭を下げる。