「…分かりました。本気にしましょう。私はこれより、遊雅様に恋心を抱くよう努めます」
「…」
ドキドキしろ、私の心臓…と命じながら、遊雅様の丸くなった瞳を見つめる。
数々の女性達は、遊雅様のこの虹彩にどうやってクラクラしたのだろう。
私にフェロモンや色恋といったものは分からない…でも、敬愛する遊雅様のためなら、どんな仕事もこなしてみせる。
目に力をこめて、まばたきもせずに遊雅様を見つめていると、ぽん、と頭に手を乗せられた。
「冗談だよ。真に受けるな。自分のことは、もっと大切にしろ。恋心なんて安易に持つものじゃない…來佳はかわいいんだから」
「!」
前髪を撫でて離れていった手。
先ほどまでのようにそらすことなく、真摯に私を見つめる瞳に、心臓がドクンと音を立てた。



