【SS】それは、無自覚な愛情。

 どうせ九条の中枢には入れないから、家の恩寵を受けられるうちに遊んでおく、というその快楽主義に、私がどれだけ頭を悩ませているか。

 裏でしている努力にもっと時間を(つい)やせば、独立なりなんなりできる能力があるはずなのに。

 私でもなく、お仕えしている遊雅様自身が腐ってどうするのか。


 気付かれないように小さくため息をつくと、遊雅様は「そうだ」と言って私にお顔を向けた。




「お前がいつからか言い始めたうそ…僕と付き合ってるっていうアレ。お前が本気になるなら、女の子と遊ぶのやめてもいいよ」




 遊雅様はニヤリと、得意気に笑う。


 あれは、遊雅様をお迎えに行くとき、よく相手の方に彼女かどうか聞かれるから、そう言えばスムーズに事が運ぶのかと思って言い始めた…。

 ただの、仕事のための方便。

 だけど、私がそうすることで遊雅様の将来が(ひら)かれるなら、彼の専属メイドとして、選択肢はひとつ…?