最初は子供だから敬遠しているのかと思ったのだけれど、違った。
私に、“退職金は弾むから辞めな”、と何度も仰って、“そんな仕事はしなくていい、大変じゃないか?”とよく気遣って。
九条の分家でメイドをしていた母が、大切な家宝を壊して負った賠償金…。
母1人では返せないその多大な借金を返すため、やむなく本家に雇われた私。
そんな身の上の人間に、随分とやさしくしてくれた。
根はいい方なんだ。
拒否権なく始まったこの仕事も、お仕えする相手が遊雅様だから腐ることなく続けられているくらい。
「本当に、惜しい方ですね…遊びぐせさえなければよいのに」
「なんだよ、メイドのくせに説教か?」
「いいえ、ささいな願望です」
「ふん…」
遊雅様は目を細めて、暗くなってきている空を見上げる。



