【SS】それは、無自覚な愛情。



 遊雅様が女性の肩を抱いて、私に背を向ける。

 どうやら私を無視されるおつもりらしい。

 衆人の視線が突き刺さる。


 …いや、それは置いていかれた女だからではなく、私の仕事を表すこのメイド服が珍しいからか。




「恐れ入りますが、お嬢様。私は遊雅様とお付き合いしております。遊雅様は私を嫉妬させるため、お遊びを好んでいるお方です」


「いいや、彼女がよくつく、うそだよ。君は僕の声だけを聞いていて?」


「…遊雅様、もうおやめください。私、そのようなことでは嫉妬できません…胸が痛くなるだけでございますっ」


「!」




 お腹の前で揃えた手を胸に移動させて、震え、悲しみに打ちひしがれた声を出す。

 ギュッと目をつむったせいで遊雅様のお姿は見えないけれど、「來佳(らいか)…」と動揺したようなお声が聞こえた。