【SS】それは、無自覚な愛情。

 遊び(ほう)けてばかりの遊雅様をお迎えに行く、いつも通りの日々の中、私は以前とはちがう感情を抱くようになっていた。

 私に向かない、(はしばみ)色の瞳。

 他の女性に触れる、やさしい手。他の女性を誘う、甘い言葉。




「どう?今晩。一緒に星でも見ない?2人きりでさ…」


「…もう、やめてください。他の女性なんてかまわないで、私を――!」




 見て、ください。

 私に、あなたも本気になってください…遊雅様。


 もう、私は恋を知ってしまったのですから。


 遊雅様は私を見ると、唇を引き結ぶ。




「…ごめん。そういえば今晩は曇る予定だったよ。また会えたらそのときに、ね…。…來佳」




 声をかけた女性に別れを告げた遊雅様は、私の前へと歩いてきた。

 茶色と緑色が混ざった、榛色の蠱惑(こわく)的な瞳が私に向く。

 こちらに伸ばした手でさらりと頭を撫でて、遊雅様は私をやさしく抱き寄せた。