遊雅様は前髪をくしゃっと掴み上げて、私からお顔を背けた。
髪の間から見える耳が赤くなっている。
その後、到着した九条のお屋敷で、大旦那様が待つ食堂へと向かった私たちは、同時に口を開いた。
「おじい様、來佳を僕付きから外してください!」
「大旦那様、私が遊雅様に恋をすれば、遊雅様が女性とのお遊びをやめてくださると宣言なされました」
「ほう、ほう。ひとまず席に着きたまえ。話はそれから聞こう」
私を遠ざけるつもり?と眉をひそめて遊雅様を見ると、彼もまた苦々しいお顔で私を見る。
遊雅様には負けない。
私は自分の仕事を果たしてみせる。
その後、無事に大旦那様を味方につけた私を見て、遊雅様はやはり苦いお顔をしていた。
恋心の証明のために、遊雅様の真面目なところが好き、誠実なところが好き、と伝えていると、やがて対抗策に気づいてしまったのか…。
私の前では、遊んでばかりの人になってしまったけれど。



