「澄、いつもありがとうね」
「お嬢様……調子狂うんでやめていただけませんか」
「なんて可愛くない執事!」
一方――
「そろそろ教えてくれてもいいんじゃない? 純弥。さっきの子、知り合いだろ?」
「え、何のこと?」
「見ず知らずの女の子に、お前が”前に惚れてた美月ちゃん”から貰った飴を、ホイホイあげるわけないだろ」
「もう~疑り深いなぁ、伊織は」
そう言って「ヒヒ」と笑う白い服の人、純白純弥。
そして純弥の親友、藤堂 伊織(とうどう いおり)。二人とも、大学二年生。
そんな背の高いイケメン二人が、やいのやいのと言い合うサマはまさに眼福で。
道行くひとたちは器用に、二人から視線を外さず通り過ぎていく。
「しっかし。神様も酷なことするよねぇ」
「どういう事だ?」
「いやね。恋ってのは、つくづく上手くいかないものだなぁってね。俺もしかり。さっきの二人もしかり」
「……やっぱ知り合いなのか」