――…



書類保管庫で資料を探し終わった私は、扉を閉めてぐっと伸びをする。



あー疲れた。

ファイルに入れる時に順番を並べ替えずに入れる人がいるせいで、こうやって探す時に手間がかかっちゃうんだ。


もう、無駄に疲れちゃったよ…。




ふぅ〜っと溜息をつきながら下の4階に戻ろうと廊下を進み始めた時。


曲がり角を横切る2人の男女が見えた。



あ。

今の彰人だ。



……それと、一緒に歩いてた女性はもしかして…。




私はそわそわしながら、2人が進んだ廊下の角からこっそり顔を覗かせる。


そこには彰人と、小柄な女性社員が荷物を持ったままエレベーターを待っていて。

何やら親しげに言葉を交わしていた。




「須崎さんって学生の頃とか部活してました?」


「部活? うん、してたよ。弓道とかバレーとか」


「わぁ、かっこいい。絶対後輩から慕われてましたよね」


「え〜? なんで?」


「頼もしいし教え方上手いし優しいし、“理想の先輩・上司”って感じがすっごくします!」


「あはは、それは嬉しいなぁ」


「私も、須崎さんが上司で本当に嬉しいです!」


「照れる〜。桃田(ももた)さん素直で良い子だね。
あ、エレベーター来たよ」




そして2人は和やかな雰囲気を残したまま、エレベーターの中へと入ってしまった。




……何、今の。


あれが噂の“めっちゃ可愛い新入社員”?


ほんとに……可愛過ぎなんだけど……?



しかも、彰人とすっごい親しげだったんだけど……?


ちょっと待って、心臓が鈍く鼓動を打っててなんだか苦しい。


これは、かなり嫌な予感がするんですが。