驚き息をのむ柊さんに、私はまたごめんなさいと続ける。

「私が、ちゃんと気づいていれば……近くに敵がいる可能性を考えていればこんなことには!」
「望乃さん?」
「いくら友だちに話しかけられたからって、杏くんから目を離さなければ!」
「望乃さん、いったん落ち着いて」

 柊さんに呼びかけられていたけれど、叫ばずにはいられない。
 この後悔をはき出さずにはいられなかった。

「相手がヴァンパイアだって分かっていたのに! クロちゃんを置いてきたせいで逃がしてしまって!」
「望乃さん――望乃!」
「っ!?」

 呼び捨てで、強く呼ばれる。
 それと同時に、ギュウッと抱きしめられていたことに気づいて一瞬全てが吹き飛んだ。
 私を自分の腕で包んだ柊さんは、ゆっくりと声をかけてくれる。

「落ち着いて。すべてを君が背負う必要はないんだ」

 柊さんの言葉は優しく私にしみわたっていく。
 彼の柔らかい茶髪が私の額をくすぐった。

「一人じゃない、そばにはいなくても君を心配してくれる人はいるだろう?」

 柊さんの言葉に、電話ごしに聞いたお母さんの言葉を思い出す。

『望乃ちゃん自身のことも大事にしてね?』

 そうだ、お母さんはいつも私を心配してくれてる。