次は柊さんの選んでくれたドレス。

 明るめだけれど落ち着いた色合いのパープルだ。
 サテン生地のマーメードラインのドレスで、大人っぽいけれど(そで)が布をたっぷり使ったフレアスリーブになっているからちょっと可愛らしさもある。
 でもこんなに大人っぽいドレス、私着こなせるかなぁ?

 正直不安だったけれど、見せると柊さんは嬉しそうな笑みを浮かべた。
 この間からたまに見せるようになった、ふわりと優しく甘い笑顔。

「良かった。思った通り、とても良く似合っているよ」
「ありがとうございます」

 今度はすぐにほめてもらえたので、照れながらも素直にお礼を言う。
 逆に紫苑くんはさっきの柊さんみたいに目をまん丸にしている。
 その驚きの顔が笑顔になると、「すごーい!」とはしゃぎ始めた。

「しゅうにーちゃんすごい! ののねーちゃんキレイ!」

 まだ知ってる言葉が少ないからか、すごいとキレイばかり連呼する紫苑くん。
 その後も杏くんが戻ってくるまで、いくつか選んでもらったドレスを着て披露(ひろう)した。

 任務を中断した状態だから申し訳ないなって気持ちもあったけれど、気になっていたドレスが着れてちょっと楽しかったな。

 とはいえ、これ以上護衛任務を放り出すわけにはいかない。
 私はメイド服に着替え、気を引き締め直してカフェスペースへと向かった。