そして、四月一日。
 私は緊張しながら常盤邸に来ていた。

「……すごっ」

 思わずつぶやく。
 だって、美奈都さんは社長夫人だから良いところに住んでるんだろうなとは思っていたけれど、なんか思っていた以上にすっごい豪邸(ごうてい)なんだもん!

 ちょっと大きな会社の社長程度だと思っていた美奈都さんの旦那さんは、実はおもちゃやゲームなどの有名なメーカーの社長で相当な資産家(しさんか)なんだって。
 つまり、すっごいお金持ち。

 今回の依頼はその旦那さんの会社が今大事な契約を目前にしていて、それをよく思わない人たちが契約を取りやめるよう(おど)して来たことが始まりらしい。
 家族が無事では済まない、みたいな脅迫文(きょうはくぶん)が届いたということで三兄弟の近くで護衛が出来る私に声がかかったというわけ。

 だからその契約が無事結ばれるまでの約ひと月、私は表向き常盤邸の住み込みメイドとして働くことになってるんだ。
 ちゃんとメイド服とか支給されてたり、結構本格的。
 緊張もあるけど、メイド服も可愛いしちょっと楽しいかも。

 初めての依頼だし、このときはまだワクワクの方が大きかったんだ。