「お風呂入っていていませんでしたーとかならないかな?」

 柊さんたち屋敷の主人家族はお手伝いさんたちより早めに食事をとる。
 だから今はいつもならお風呂に入っているくらいの時間だった。
 でもまあ、待ってるって言ってたしそんな都合のいいことにはならないよね。
 トホホ、と思いながら青いカーペットの上を歩いていると、それこそお風呂上りらしい杏くんと紫苑くんにバッタリ会ってしまう。

「なっ⁉ お前、なんでこんなところにいるんだよ⁉」
「え? えっと……柊さんに呼び出されちゃって」

 詳しい事情は話したくなくて簡単に説明する。
 でもそれじゃあ納得してくれない杏くんは目を吊り上げて私をにらんだ。

「呼び出されて? 襲いに来たの間違いじゃないのか?」
「はぁ?」

 何を馬鹿なことを言ってるんだろう。

「襲うわけないでしょう? 私は護衛なんだよ?」

 言葉を返しながら、そういえば前ここに迷い込んだとき柊さんも同じようなことを言っていた。
 護衛として認められていないのは知ってるけれど、そんな言い方ないよね!?
 本当に、二人して私を何だと思っているのかな!?

 ムッと怒ると、杏くんの口から思ってもいなかった言葉が出てきた。

「だから、護衛って言いながら兄さんに近づいて……口説こうとしてるんじゃないのかってことだよ!」
「口説く!? 私が!? なんで!?」

 なんでそんな言葉が出てきたのか分からなくて驚く。