週末私は紫苑くんとたっぷり遊んだ。
 どこへ行っても「ののねーちゃん!」ってついて来てくれて可愛いったらもう!
 でも、その分また月曜日に泣かれそうで怖いけど。
 あの泣き顔を見ちゃうと護衛任務も放り投げて一緒に居たくなっちゃうんだよね。

 任務放り出すわけにはいかないから泣く泣く耐えているけど。

 というわけで、案の定また泣かれてしまった月曜日は鋼の精神を駆使(くし)して紫苑くんと別れた。

「紫苑は本当に君を気に入ってるみたいだね」

 車の中で柊さんがそんな感想をこぼす。
 感心している様にも聞こえるけれど、表情が変わらないからやっぱり何を考えているのか分からない。

「けっ! まったく、どうやってたぶらかしたんだか」
「たぶらかしたって……」

 とにかく私に対しては反発する精神なのか、杏くんは悪口ばっかり。
 何だか変に突っかかってくる小学校のときの同級生みたいだなって思いながら、私はオトナの対応で受け流した。

「たぶらかした覚えはないよ。でも紫苑くんは可愛いし、なついてくれて嬉しいな」

 そうすると杏くんはムスッと不機嫌顔になって黙り込む。

 ふんだ。
 ハンターになるための訓練で、精神的な部分もおばあちゃんにすっごくきたえられたからね!
 そう簡単にケンカ買ったりはしないんだから。

 なんて、内心得意げになってることが知られたらまだまだ甘いって叱られそうだけど。
 でも今は厳しいおばあちゃんはいないんだし、ちょっと得意になるくらいは良いよね?