「遅咲きで一輪だけ残ってたんですね。望乃ちゃんに渡したくて木に登っちゃったんですか?」

 玲菜さんの質問にコクンとうなずく紫苑くん。
 どうやら自力で上ったらしい。

 それにも驚いたけれど、仲良くなりたいと思ってくれていたことも驚いた。
 一緒に遊んではいたけれど、まだよそよそしい感じがしてたから。

「紫苑くん、私と仲良くしてくれるの?」

 聞くと、ためらいもなく「うん」と返って来た。

「ののねーちゃん、きれいですき」

 そして天使の笑みを浮かべるものだから、私はきゅーん! となって紫苑くんを抱きしめる。

「ありがとう。でも、もう危ないことしないでね?」
「うん」

 そうしてギュッとしていると、紫苑くんは泣き疲れたのと安心したのとで眠ってしまった。
 寝顔がまた可愛いな。


 この出来事の後から、紫苑くんはとっても私になついてくれるようになった。
 不安だったけれど、紫苑くんと仲良くなれたことで私も少し元気が出てきたんだ。

 まあ、入学式の日は「しおんもののねーちゃんといく!」なんて言って困っちゃったけどね。