最強メイド!おぼっちゃまたちをお守りします!

「応援するつもりだったけれど、欲が出てきたな」
「え? 欲?」

 何を言っているのか分からなくて聞き返すと、にぎられている手にギュッと力が込められる。

「ねぇ、望乃さん。付き合い始めたっていうのに、すぐにお別れするの?」
「へ?」
「もっと一緒にいたいって思わない?」
「あ、あの……柊さん?」

 なんだか様子がおかしい。
 優しいほほ笑みが、甘さはそのままで少し意地悪なものになっている気がする。
 しかも私の手を掴んでいる柊さんの手にもっと力が込められた。

「僕の血、美味しかったんでしょう? もっと飲んでみない?」
「なっなっ!?」

 なにこれ!?
 もしかして私、誘惑(ゆうわく)されてる!?

「た、たしかに美味しかったですけど、吸血衝動はないから別にそこまで飲みたいってわけでは!」
「そうなの? でも衝動が来たら飲みたくなるってことだよね? じゃあやっぱりそばにいた方がいいんじゃないかな?」
「え!? あの、そのっ!」

 もはや何を言っているのか分からないくらい混乱してきた。
 今の柊さんはちょっと怖いのに、ドキドキ早まる鼓動(こどう)が止まらない。
 これ、どうすればいいの!?

 完全にテンパった私だったけれど、突然吹き出すような笑い声が聞こえた。