「望乃ちゃん、杏を助けてくれてありがとう」
「いえ、そんな。私のミスで一度は連れ去られてしまったんですし……」

 美奈都さんからのお礼の言葉を私は素直に受け取れなかった。
 最終的には助けることが出来たとはいえ、一度は連れ去られてしまったから。
 杏くんに怖い思いをさせてしまったし、美奈都さんたちを心配させてしまった。
 護衛任務をまっとう出来たとは言えないから。

「それでも君が杏を助けてくれたことに変わりはない。それに、君がいたからこそすぐに杏を助けることが出来て、契約発表も無事終えることが出来たんだ。……感謝しているよ」

 落ち込む私に、旦那さんは柊さんと同じ色の目を優しく細めてお礼を伝えてくれる。
 そこまで言われたら、感謝を受け取らないわけにはいかなかった。

 失敗もしてしまったけれど、この笑顔を守ることは出来た。
 完璧とは言えないけど、これで護衛任務は終了なんだ。
 少しのさびしさを胸に、私は最後に笑顔で言う。

「私もみんなを守ることが出来て本当に良かったです。護衛依頼、ありがとうございました!」