まん丸大きいなお月様が見えるようにカーテンを開けた部屋。
 そんな部屋で私、弧月(こげつ)望乃(のの)は電気もつけずに引っ越しの準備をしていた。

「ふふふーん、ふ~ん……あとはこれっと」

 鼻歌を歌いながら大きなバッグに荷物をつめ込んで、最後に一番大事なものを手に取る。
 黒い十五センチくらいの筒状の棒。
 これは警棒みたいに伸びて、一メートルくらい長くなる私の専用の武器なんだ。

 女の子が何でそんな武器持ってるのって言われそうだけど、何を隠そう私は普通の女の子じゃない。

 実は――ヴァンパイアなの!

 と言っても、人間の血を飲んだことなんてないんだけどね。
 生まれたときから人間より身体能力が高いヴァンパイアだけど、血を飲みたいっていう吸血衝動が出るのは早くても中学生くらいからなんだって。
 この春やっと中学一年生になるという私が、そんな衝動出たことなんてある訳がない。

 そんな半人前のヴァンパイアな私の夢はヴァンパイアハンターになること!
 ヴァンパイアを狩る側のハンターにヴァンパイアがなるなんて、昔だったら絶対有り得ない夢。

 だけど、今は普通に目指せる夢なんだ。